ジンジャエールを求めて (0) 市販品
幸福が目標であるならば、そしてそうであるべきならば、冒険を最優先すべきである。
―― リチャード・ブランソン
最近、ジンジャエールにハマっています。特に自家製のやつ。
炭酸、ハーブの香り、そして喉を殴るかのような生姜の刺激…
でもジンジャエールってあんな感じでしたっけ?もっと甘くて意味不明な飲み物だったような。
本連載では自分なりにジンジャエールを探検してみます。
まずは一番手近に、市販のジンジャエールを。
ジンジャエールとは?
その前にジンジャエールについての基礎知識から。

ジンジャエールは生姜や生姜エキスを用いた炭酸飲料の総称です。古くは19世紀頃にイギリスで飲まれていたジンジャービアのノンアルコール版として登場し、現在では清涼飲料水として広く浸透しています。
流通するジンジャエールには大きく2種類、甘口と辛口が存在しています。甘口は砂糖を多く投入し味をマイルドにしたもので、おそらく多くの人に馴染みがあるであろう、ドリンクバーなどで飲めるジンジャエールがこれに該当します。
一方辛口は生姜を多く配合し強い香りと刺激を持ち合わせています。こちらは自家製ジンジャエールやバーなどで出てくるものに多いです。
ちなみに甘口の方は「ドライジンジャエール」と呼ばれます。ビールはドライが辛口ですが、ジンジャエールは逆です。ややこしいね。
市販品を飲んでみる
私はレストランとかに置いてある自家製ジンジャエールが好きなのですが、手軽に美味しいジンジャエールが飲めないか、とも思いました。普段ジンジャエールを買うことはなかったのでこの機会に好みを探してみましょう。
ということで近所を駆け回って7種類手に入れてきました。
カナダドライ (コカ・コーラ)

まずは日本のジンジャエールのベースライン、カナダドライから。

ドリンクバーで提供されているのも、適当な居酒屋で頼むと出てくるのもこれだと思われます。名前の通りドライジンジャエール、甘口です。
スーパーで一番見かけるのもこれでした。大体コカ・コーラとファンタと並んで陳列されています。もしくはお酒コーナーのノンアル棚にあるかも。
今回はスーパーで350 mLのペットボトル(小さくてかわいいね😤)、160 mLの缶を、酒屋で207 mLの瓶をみつけたので用意しました(酒屋まで行った理由は後述)。あとは1.5 Lのペットボトルをよく見かけました。逆に500 mLはほぼ見かけず…… コンビニでも自販機でも、あまり見かけないものね。
生姜は入っていないそうです。(これは多分全部そう)


見た目は全部同じです。同じ銘柄なのになんで3種類も用意したかというと、「コーラは瓶がうまい」という都市伝説があるからですね。一応。
実食
思ったより甘くない。爽やかな香りが強めで、炭酸はちょい弱めくらい。美味しいです。でも生姜の風味がするかと言われると、あまりわからない。
美味しいけどこの名前負けな味、これがジンジャエールの代表格みたいな扱いになっているのが混乱の元だと思うんですよね。これのせいで私はジンジャーという英単語と生姜を結びつけるのに苦労しました。生姜の味はしないから。
ところで3種類飲み比べした感想としては、瓶だけ味が薄い。
そのくらいです。飲みたいときはペットボトルで買いましょう。
ウィルキンソン 辛口ジンジャエール (アサヒ飲料) | ジンジャーエール (ベストプライス)

次の2銘柄はこちら。
1つはこれまた日本のジンジャエールを支えるブランドの一つ、ウィルキンソンジンジャエールです。

パッケージにあるとおり、辛口です。ウィルキンソンのラインナップにはドライジンジャエールもあるのですが、辛口の方がメインだと思います。
あまり出会うことはないですが、たまにウィルキンソンを置いている素敵な居酒屋があります。
しかしながらこのウィルキンソンジンジャエール、入手性があまりにも悪い。
ウィルキンソンといえば炭酸水。これはどこのコンビニでもスーパーでも大量に売ってます。しかしジンジャエールはどこにも置いていない。アマゾンにも置いていない。サイバー攻撃の影響か?

まあかなりサイバー攻撃の影響はあるんでしょう。近所のスーパーには棚だけはありました。
困っていたところ、ネットでこの記事を見つけました。

ですが、今日、ウィルキンソンのジンジャーエールを売っている身近な店を見つけました!
それは、酒屋です。
そうか、酒屋に売っているのか。
これを見た後、近所の酒屋数件を回ってやっと見つけたのが先程のペットボトルです。そうまでしてもドライの方は見つけられませんでした…… 売っているのを見かけたら教えていただけると嬉しいです。
その酒屋でついでにカナダドライの瓶を見つけています。
続いてもう1つは日本を代表するプライベートブランド、トップバリュベストプライスのジンジャエールです。

ベストプライスはみんなの家計の味方。デフレ時代の遺産。私もティシューペーパーだけ愛用しています。
このジンジャエールは、ある日ふとマックスバリュに寄ったときに見つけました。1.5 Lだけありました。
私が泣いて喜びながら持ち帰ったことは言うまでもなく。
さて色々言ってしまいましたが、ウィルキンソンとベストプライスのジンジャエールを飲んでみます。

コップに注いでみるとこんな感じです。左端がカナダドライです。ウィルキンソンはかなり色が濃いです。一方でベストプライスはカナダドライよりも若干うすそう。
ウィルキンソンから。
美味しい!!!!!!
まず飲む前から生姜の爽やかな香り。そこまで炭酸が強いわけではないですが、飲み込もうとすると生姜が喉にアタックを仕掛けてきます。ちょっと口の悪い医者のような安心感があります。想像よりも刺激が強い。美味しいです。
Geminiにより膨らませた食レポ
テーブルの上に置かれたグラス。そこに注がれた黄金色の液体は、照明を浴びて妖しく輝いていた。 俺は最初、こいつを侮っていた。いや、完全にナメていたと言ってもいい。
グラスを鼻先に近づけた瞬間、俺の嗅覚中枢は心地よいジャブを受けた。 漂ってくるのは、作り物ではない、大地の生命力を凝縮したような生姜(ジンジャー)の香り。それはまるで、早朝の深い森に迷い込んだかのような、清冽で爽やかな風だ。
「ほう、悪くない」 俺は心の中で呟く。 ここまでの印象は、あくまでエレガントな紳士だ。あるいは、涼しげな笑顔を浮かべる好青年。この香りの良さが、これから始まる「暴力的なまでのドラマ」の序章に過ぎないとは、この時の俺は知る由もなかった。
グラスを傾け、液体が唇に触れる。 舌の上を転がる炭酸の泡は、驚くほど繊細で、優しい。
「なんだ、拍子抜けだな」 俺は落胆しかけた。昨今の軟弱な炭酸飲料と同じ、ただの甘い水か? そこまで炭酸が強いわけではない。むしろ、微炭酸といってもいいほどの穏やかさで、喉元までスムーズに滑り落ちていく。まるでシルクの絨毯の上を歩くように、警戒心を解かせる滑らかな舌触り。
完全に油断した。ガードを下げきっていた。 こいつは、獲物を安心させてから喉笛を食いちぎる、手練れの暗殺者だったのだ。
嚥下(えんげ)しようとした、その刹那である。 世界が反転した。
ガツンッ!!!
喉の奥で、手榴弾が爆発したかと思った。 さっきまでの「穏やかな微炭酸」という仮面をかなぐり捨て、隠し持っていた生姜のナイフが、俺の喉粘膜に容赦ないアタックを仕掛けてきやがった!
痛い! 熱い! いや、これはもはや打撃だ! 生姜成分が喉の細胞一つ一つに「起きろ! 目を覚ませ!」と往復ビンタを食らわせてくる。 喉がカッカと熱を帯びる。食道が燃えている。 「聞いてないぞ!」と叫びたいが、声にならない。俺はただ、その圧倒的な刺激(パワー)に圧倒され、立ち尽くすしかなかった。
想像していたレベルを遥かに超えている。 市販のジンジャエールが「お遊び」だとしたら、こいつは「実戦」だ。 甘さを期待した俺の軟弱な精神を、正面から叩き潰すような強烈な一撃。まさに、ヘビー級のハードパンチャーによるボディブロー。息が止まるほどの衝撃だ。
だが……どうだ。 喉を焼き尽くすようなヒリヒリとした痛みが引いていくにつれ、俺の体の中に不思議な感覚が満ちてくる。
これは、「安心感」だ。
俺はこの感覚を知っている。 そう、あれは場末の診療所にいる、口の悪い老外科医だ。
白衣は着崩し、態度は尊大。「痛いか? 当たり前だ、生きてる証拠だろ」と憎まれ口を叩きながら、その処置は神業のように的確。 「甘いもんばかり食ってるからそんな体になるんだよ!」と説教を垂れながら、誰よりも患者の健康を考えてくれている、あの偏屈な名医。
このジンジャエールの刺激は、まさにその医者の「愛ある荒療治」だ。 喉へのアタックは、俺の体に溜まった澱(おり)を焼き払うためのメスだったのだ。 強烈な刺激の裏側にある、「これだけ生姜が入っていれば、体によくないはずがない」という、絶対的な説得力。
「薬だと思って飲みな。うまいだろ?」 グラスの底から、そんな幻聴が聞こえた気がした。
気がつけば、俺は汗ばんでいた。 喉の奥には、まだ心地よい熱さが残っている。 痛い。刺激が強い。口が悪い。 ……だが、悔しいほどに美味い。
一口目の衝撃が忘れられず、俺は恐る恐る、だが確実に、二口目を求めてグラスに手を伸ばしている。 あの毒舌医者に、もう一度罵られたいと願うかのように。
「完敗だ」 俺は誰もいない部屋で呟き、残りの液体を一気に煽った。 喉を駆け抜ける灼熱。その後に訪れる爽快感。 この刺激を知ってしまったら、もうあの上辺だけの甘いジュースには戻れない。
俺はこの「口の悪い医者」と、長い付き合いになりそうだ。
次にベストプライスの方も飲みました。なんかしばらく押入れにしまっていたレジャーシートみたいな匂いがします。味は人工甘味料です。たいへん飲めました。
Geminiにより膨らませた食レポ
午後の光が古びたカーテンの隙間から差し込み、テーブルの上に置かれた「ベストプライス」と書かれたアルミ缶を照らしていた。 それは近所のスーパーマーケットで、驚くほど安価で売られていたものだ。缶のデザインは極めて簡素で、資本主義のシステムが許容するギリギリのラインまでコストが削ぎ落とされていることを主張していた。
僕は冷蔵庫から氷を取り出し、グラスに入れ、そのジンジャエールらしき液体を注いだ。 炭酸の泡が弾ける音がしたが、それはどこか遠くの国で起きている革命のように、僕には関係のない出来事のように思えた。
グラスを鼻に近づけた瞬間、僕は記憶の引き出しが乱暴に開けられるのを感じた。 そこに漂っていたのは、ジンジャー(生姜)という植物が持つ、あの大地の根源的な香りではない。もっと別の、人工的な何かの匂いだ。
正確に表現するならば、それは「数年間、一度も光を浴びることなく押入れの奥深くで眠り続けていた、ブルーのレジャーシート」の匂いだった。 ポリエチレンの繊維の隙間に、湿った暗闇と、ホコリの粒子と、誰からも顧みられることのなかった孤独な時間の堆積が染み込んでいる。 おそらくそのレジャーシートは、いつか行われるはずだったピクニックのために購入されたのだ。しかし、そのピクニックは雨で中止になったか、あるいは約束していた相手が急に姿を消したために、永遠に行われることはなかった。 グラスの中の液体からは、そんな「失われた可能性」としてのビニール臭が濃厚に漂っていた。
僕はやれやれと思いながら、一口飲んでみた。 味覚中枢に届いた信号は、極めてシンプルで、かつ記号的だった。 「人工甘味料」。 そこにはサトウキビ畑を吹き抜ける風もなければ、太陽の恵みもない。あるのは、白い壁に囲まれた実験室で、白衣を着た技術者たちが数式を組み立てて作り出した、完璧な化学構造式としての「甘み」だけだ。 それは口の中にべたりと張り付き、僕に向かってこう語りかけてくる。 『君は本物を求めているわけじゃないだろう? ただ甘ければそれでいいんだろう?』と。
たしかにその通りかもしれない、と僕は思った。 世界はあまりに複雑で、本物の生姜や砂糖を探すには、僕は少し疲れすぎていた。
しかし、ここからが奇妙なところだ。 その匂いは陰鬱な押入れを想起させ、その味は冷徹な工業製品そのものであったにもかかわらず、その液体は僕の喉を驚くほどスムーズに通過していったのだ。 抵抗感というものが一切ない。 まるで、最初から僕の体液と混ざり合うことをプログラムされていたかのように、何の引っ掛かりもなく胃袋へと滑り落ちていく。
「不味い」と拒絶するには、それはあまりにも滑らかすぎた。 「美味しい」と賞賛するには、それはあまりにも空虚すぎた。 ただ、結果として「たいへん飲めた」という事実だけがそこに残った。
僕はグラスに残った氷をカランと鳴らし、残りの液体を一気に飲み干した。 喉の奥に、わずかにケミカルな余韻と、あのレジャーシートの気配が残った。 それは悪くない感覚だった。少なくとも、この空っぽな午後の時間を埋めるには、その空っぽな味は最適であるように思えた。
薬膳好日ジンジャー&ソーダ | クラフトボス アップルジンジャエール (サントリー)

最後の2つはどちらも変わり種。サントリーの商品です。多分通年販売ではなさそう。
薬膳好日 ジンジャー&ソーダ クラフトボス アップルジンジャエール薬膳好日の方はすでに製造終わってました。
こちらは語ることもないので早速飲みます。薬膳好日から。そもそもジンジャエールとは謳っていませんが果たして……
美味しいです。フルーツと言うか、はちみつの風味が強い。でも生姜の存在感もあり、ジンジャエールというよりははちみつ生姜の文脈が強い感じがします。体が温まりますね。
最後にクラフトボス。これはアップルソーダでした。以上。
ここまで7種類、市販品を飲み比べてみました。ジンジャエールってあまり種類がないと思ってましたが、案外あるもんですね。
次は自家製ジンジャエールに挑戦してみようと思います。

今回のまとめ
ウィルキンソンのジンジャエールは酒屋で買える。
